皆さんにとって“質の高いコンテンツ”とはなんでしょうか?
オシャレなデザイン、キャッチーなコピー、それとも色彩鮮やかな写真がたくさん使われている印刷物やウェブサイトでしょうか。
それも正解のひとつかもしれません。
ただ、良いコンテンツの基準はいたってシンプル。
それは“伝えたい情報が、正確に、分かりやすく相手に伝わること”。
どんなに目を引くデザインでも、伝えるべきことが伝わらないのであれば一気にコンテンツの値打ちは下がりますし、情報に誤りがあれば本末転倒です。
この、情報の質をブラッシュアップするための大切なプロセスが「校正」です。
今回は皆さんにも身近な「校正」についてご紹介します。
もちろん、このコラムも校正済みなのでご安心を…。
校正って何だろう?
「校正」とは、元となる原稿と校正紙(ゲラ)を照らし合わせ、正しく制作されているかを確認する作業です。その範囲は文字だけでなく図や写真の体裁チェック、修正作業が正しくできているかといった確認作業も含まれます。このプロセスは、チラシや冊子といった印刷物はもちろん、ウェブサイト制作に至るまで、ことばを使って情報を発信するコンテンツ全般において同様に行われます。
校正と校閲の違いは?
ところで、数年前に人気女優が主演で出版社の校閲部を舞台にしたテレビドラマが放映されたことがありました。地味にスゴイ!というコピーに、同じ業界にいる者として妙に納得したのを覚えています。この「校閲」と「校正」、じつは似て非なるものなのをご存知ですか?
「校正」が原稿と照らし合わせるのに対し、「校閲」は日本語としての文章表現の正しさや内容の事実確認までを含みます。新聞社や出版社などでは必ず校正・校閲を経て、記事や出版物が世に出されます。実際、ドラマでは原稿の事実確認のために主人公が会社を何度も飛び出します(これはかなり誇張されているようです…)。
「素読み」の重要性
一般的に印刷物やウェブサイトの制作過程で行われるのは「校正」ですが、当社ではこれに加えて「素読み」と呼ばれる作業を行う場合があります。
「素読み」は誤字や脱字チェック、内容に矛盾がないかなど、読み手目線で校正紙を確認すること。万が一原稿そのものが間違っている場合も、素読みを行うことで、日本語として正確で分かりやすい情報へとブラッシュアップすることができます。
まとめ
- 校正とは、原稿などと校正紙を比べて誤りを正すこと
- 素読みをすることで原稿の間違いに気づくこともある
- 校正と校閲では目的が違う
「校正」は情報発信へのリスクヘッジ
実はこの「校正」、ノウハウや明確なエビデンスが必要とされる専門的な仕事です。
質の高いコンテンツ制作には、まずはお客さま側でもしっかり確認を行っていただくことが重要です。ただ、文章を隅々まで確認することは意外に難しく、セルフチェックではことばの誤りに気づきにくいもの。「あんなに何度もチェックしたはずなのに、こんな間違いが残っていたなんて…!?」というのは、よくある話です。
笑い話で済めば良いですが、印刷物の回収や刷り直し、影響先への謝罪対応など、誤った情報が社会的・金銭的なリスクを引き起こしてしまうと大変です。
そのため、情報を取り扱う新聞社や出版社、一部の印刷会社は校正・校閲を専門とする部署を持っており、世の中には校正業務を専門とした会社も存在します。
プロの校正者がすべての誤りをカバーできるわけではありませんが、“伝えたい情報を、正確に、分かりやすく相手に伝える”には、やはり専門のスタッフの力を借りることがいちばんの近道ともいえます。
まとめ
- 校正には専門的な技術が求められる
- 専門スタッフの校正が企業のリスクヘッジにつながる
「校正」の専門部署がある理由
では、プロの校正者がもつ専門的な技術とはいったいどんなものなのでしょうか?
ことばにまつわる部署というと、「もしや歩く国語辞典のような人間がたくさん集まっているのでは?」と想像されるかもしれませんが、ここでいう技術とは語彙力プラス校正のテクニックの総合力を指します。
具体的には、部署としての豊富な経験をもとにした誤りを見逃さない業務フロー・文字組みの知識・過去に起こったミスのデータといったものを総合して、正確で質の高いコンテンツに仕上げていくのが専門部署に期待される役割です。
さらに、長年蓄積されてきた印刷物ごとのレギュレーション(統一表記や決まりごと)がコンテンツの精度をより向上させます。「○○株式会社のこの冊子は、△△や□□といったルールがある」といった資料が多数作成されており、時にお客様自身が意識していないような細かな点に気が付くこともあります。
これが、校正や校閲が地味にスゴイ!仕事と言われる所以かもしれません。
まとめ
- 校正部署の強みは知識と経験の総合力
- 案件(お客様)ごとのレギュレーション管理で精度アップ
平常心の守り神とシエスタ
例えて言うなら、セキの中で校正部署はコンテンツの品質を担保する守り神のような存在です。専門スタッフは約10名、入社2~3年の若手から校正歴40年以上の大ベテランまで幅広い年代のメンバーが在籍。漢検準1級取得者も複数名おり知識量も豊富です。
そんな彼らが校正時に心掛けているのは「平常心」。いつ何時でもお客様の意図を正しく汲み取ることができるよう、冷静に文字と向き合っています。
現在ではデータの原稿が一般的ですが、手書きが主流だった頃は暗号のようなくせ字の判読に苦労したことも多かったそう。そんな難解な暗号を解読し、正確な印刷物を生み出してきた歴史があるからこそ、セキの校正力に信頼を寄せてくださる方がいらっしゃいます。
余談ですが、平常心と集中力を維持するための対策として、校正部署では社内で唯一お昼寝タイムもあります。(スペインのシエスタのようだと言う人もいるとかいないとか…)頭をリフレッシュするお昼寝(?)は、校正の精度を上げる合理的な習慣と言えるかもしれません。
まとめ
- 校正部署はコンテンツの守り神
- 校正の極意は平常心であれ
校正記号は優秀なコミュニケーションツール
校正に不可欠なのが「校正記号」です。校正紙上で明確に修正指示を伝えるために生まれたもので、日本工業規格(JIS)によって統一のルールが制定されています。校正記号の重要な点は、誰がみても誤解のないよう指示が伝わること。とても優秀なコミュニケーションツールです。
校正記号は校正スタッフだけの物ではありません。チラシや販促物、ウェブサイトなどのコンテンツ作りに少しでも関わるすべての人にとっても便利なツールといえます。
「修正量が多く校正指示がカオスに…。結局一から電話で印刷会社に説明するはめになった」、「削除と書いたら、本文に“削除”と文字を入れられた」など、思うように修正が伝わらない経験をしたことがある人は、ぜひ校正記号を活用してみてください。
まとめ
- 校正記号はJISで定められた統一規格
- 校正記号は便利なコミュニケーションツールと捉える
基本の校正記号を覚えて効率アップ!
定められた校正記号は数十種類ありますが、基本の数種類を覚えておくだけで修正指示は格段とスムーズになります。また、校正紙への指示記入は原則「赤色を使用する」とされていますので、赤色のペンを使うことを心掛けましょう。色が統一されることで修正の漏れ抜け防止にもつながります。
セキではお客様へ校正記号表をお渡しして、校正記号を使っていただくことをお勧めしています。特に文字量の多いコンテンツや確認者が複数名いる案件も、校正記号を事前に共有しておくことでチェック時の負担を軽減できるかもしれません。校正記号について知りたいと思われる方はぜひご相談ください。
まとめ
- 基本の校正記号で業務の効率化を
- 修正指示は原則赤色で書き込む
最後に
日常生活のなかで校正が脚光を浴びる機会はめったにありませんが、日々接している印刷物やウェブサイトの分かりやすさには校正が大きく関わっていることが伝わったでしょうか。セキでは質の高いコンテンツ制作のため、このプロセスを非常に重視しています。これからもお客様の大切な情報発信を「校正」を通してサポートさせていただきます。